家みつ

『定期借地権付き』って安いけど、トータルではどう?

『定期借地権付き』って安いけど、トータルではどう?

相談者:定期借地権付きも考え始めた30代会社員 駒井秀信さん(仮名、東京・杉並区)

友人から定期借地権付きの物件なら安く買えると教えられました。定期借地権付きの仕組みと、メリット、デメリットを教えてください。

回答者:ファイナンシャルプランナー 家塚みつを

定期借地権は、1992年8月に施行された改正借地借家法によって設けられた制度です。従来の借地権では地主側から賃借契約を打ち切るには正当事由が必要とされていたのに対し、定期借地権は期限付きの契約で、当初の契約期間が過ぎれば自動的に契約打ち切りとなるものです。

定期借地権には3種類ありますが、住宅にかかわるものは次の2つです。ひとつは「一般定期借地権」で、50年以上の契約期間を定めて利用し、契約完了後は更地にして返却します。もうひとつは「建物譲渡特約付き借地権」で、30年以上の契約期間を定めて利用し、契約完了後は土地を返却、建物は譲渡します。多く利用されているのは「一般定期借地権」です。

定期借地権付きの物件は
増えているんですか?

制度ができて20年たち、社会的認知度も徐々に高まってきたことから、定期借地権付きは戸建て、マンションともに増えつつあります。

増加の理由としてまず挙げられるのは、価格の安さです。土地を借りて建てるので、土地の購入費用がかからない分、安くなります。国土交通省の定期借地権付き住宅実態調査によると、戸建ての場合で定期借地権付きの価格は土地所有権付きの約60%、マンションの場合で定期借地権付きの価格は土地所有権付きの約80%にとどまっています。

もうひとつ、敷地面積が広い物件が多いのも魅力となっているようです。国土交通省の同じ調査によると、戸建ての場合、定期借地権付き住宅の平均敷地面積は222平方メートルで、土地所有権付き住宅の平均128平方メートルの1.7倍の広さとなっています。定期借地権付きマンションの専有床面積も平均で86.3平方メートル、100平方メートルを超えるものが21%を占めています。

また、住まいに対する考え方やニーズの多様化も、定期借地権付き物件の増加を後押ししています。

安くて、広い。これは大きなメリットだと思いますが、デメリットも当然ありますよね。

そうですね。まず、借地期間の延長ができないので、契約期限が来たら自分が建てた家であっても住めなくなります。

土地の購入費はかかりませんが、その代わり、地代を払う必要があります。国土交通省の調査によると、地代の全国平均は戸建てで月2万7312円、マンションで月1万3809円となっています。地代は3年に一度見直され、物価や地価が上昇すれば値上げされる可能性もあります。また、一般定期借地権の場合には更地にして土地を返す必要があるので、解体費用がかかることになります。マンションでは解体費用を毎月積み立てているところもあります。あと、契約時に保証金を入れる必要もあります。契約完了時に返還されますが、戸建ての全国平均で580万円となっています。

所有権が建物部分だけということで、ローンを組むときの担保評価が土地所有権付きよりも低くなります。このため、ローンの借り入れがしにくい面もあるようです。また、転売することもできますが、定期借地権付き中古住宅の流通市場がまだ十分には整備されていないこともあって、土地所有権付き中古住宅より評価額が下がるという指摘もあります。

当然ながら、土地が値上がりした場合でも、その恩恵を受けることはできません。

なるほど。いろいろ考えなければならないことがありますね。

国土交通省では簡単なシミュレーションを行っています。土地60坪(時価3600万円)、建物価格2500万円、保証金700万円、35年ローン(金利3%)、地代42万円(年)という条件で、50年間のコスト負担(総支払額)を試算しました。結果は、定期借地権で建てた場合が7434万円、土地も購入して建てた場合が1億455万円。定期借地権付きは土地所有権付きの71%にとどまる計算でした。

ただ、土地所有権付きは土地も家も自分の資産として残ります。一方、定期借地権付きはコスト負担が少なく済むものの、50年を過ぎれば土地は返却、家は解体、何も残りません。50年を長いとみるか、短いとみるか。最初から利用期間を50年と割りきって考えられるかどうか。50年後の生活がどうなっているのか。それぞれのライフプランやライフスタイルに照らし合わせて考えてみる必要があると思います。

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