延滞する前に金融機関に相談~もし、ローンの返済が苦しくなったら~
住宅ローンの返済は20年あるいは30年と長期にわたるので、完済するまでには契約時に予想していなかったような事態が起きてしまう可能性もあります。たとえば、勤めている会社の倒産やリストラ、あるいは病気や事故。これらによって収入や家計が大きく揺らぎ、今まで通りローンの返済を続けることが難しくなる場合があります。
延滞してしまうと…
返済が困難になって3~4カ月延滞してしまうと、融資した金融機関は返済の継続は困難であると判断し、保証会社に対して代位弁済(債務者の代わりに返済)を請求します。こうなると、次章で説明する「任意売却」あるいは「競売」によって、マイホームを手放さざるを得なくなってしまいます。こうした最悪の事態を避けるためには、返済が苦しくなったとき、まずは早めにローンを借りている金融機関に相談することです。
金融円滑化法
金融機関も以前よりは柔軟に対応するようになっています。これは、2008年に返済猶予法とも言われる「金融円滑化法」が時限立法で成立し、今年3月末に終了した後も、金融庁が金融機関に対し住宅ローンの返済困難者には融資条件の変更など適切な措置を取るよう要請しているためです。金融機関によっても対応が異なり、ケースバイケースですが、ともあれ相談してみることです。
返済条件の変更
金融機関に相談する内容としては、収入や家計の状況変化を説明し、「返済条件の変更」をお願いすることになります。返済条件の変更は、返済期間の延長などで当面の返済額を少なくするものです。金融機関によって対応が異なりますが、返済期間の延長のほか、一定期間の元金据え置き、一定期間の返済額減額などの方法があります。ボーナス返済が負担になっている場合は、ボーナス返済分の変更・取りやめも可能です。
返済条件変更の概要について金融機関は公表していませんが、住宅金融支援機構の「フラット35」では、「返済相談の結果を踏まえ、返済が著しく困難な方については、家計の事情等に応じ、返済負担を軽減し、返済が継続できるように、返済条件変更の特例措置を行っています」として、返済条件の変更が可能になる条件と対応措置について次のように定めています。
- A 最近の不況による倒産など勤務先等の事情により返済が困難
- B 1~3のいずれかの基準を満たす
- 収入倍率(年収/住宅金融支援機構への年間総返済額)が4倍以下
- 収入月額が世帯人員×64,000円以下
- 住宅ローン(住宅金融支援機構に加え民間等の住宅ローンを含む)の年間総返済額の年収に対する割合(返済負担率)が、年収に応じて一定の率を超え、収入減少割合が20%以上
- C 返済方法の変更で、今後の返済を継続できる、
さらに、失業中、あるいは収入減少割合が20%以上の場合、最長3年間の元金据置期間の設定、据置期間中の金利の引き下げを行う。
また、「フラット35」では、所得の低下によって返済が困難となった場合、所得が回復するまでの間、ローンの融資を受けている住宅を賃貸し、その賃料収入により返済を継続することも可能としています。
返済条件の変更は多くの場合、返済期間が長くなることで完済までの総返済額が増加することになります。このため、返済条件の変更はあくまで一時的な緊急避難策として考え、収入の増加や支出の減少が図られるようになったときは、繰り上げ返済や返済額の増加などで以前の状態に戻すように努めることも大切になってきます。