「住宅ローンの審査」って、何を調べるの?
相談者:マイホームの購入を検討し始めた20代会社員 森元雅美さん(仮名、相模原市)
友人が住宅ローンを申し込んだら、最初の銀行で断られ、2つ目の銀行で認可されたとのこと。ローンの審査はどういう基準になっているのでしょうか?
回答者:ファイナンシャルプランナー 家塚みつを
住宅ローンを申し込むと、金融機関および保証会社による審査があります。ただ、金融機関では審査の基準を明らかにしていません。ローンを認可しなかった場合も、理由については教えてくれません。
審査の基準は金融機関によって異なりますが、通常、購入する物件自体に問題がないかどうかを調べる「物的審査」、融資を申し込んだ人の収入や信用度などを調べる「人的審査」が行われ、総合的に可否が判断されます。
まず、ローンを申し込む人にとって一番気になる「人的審査」から説明します。簡単に言えば、完済までローンの返済が滞りなく行われるかどうかの審査で、信用度、返済力が重要なポイントとなります。
信用度は、具体的には勤務先、勤務形態、勤続年数がチェック項目となります。勤務先は倒産のリスクが少なく安定しているかどうかで、大企業、公務員の信用度が高くなります。ただ、中小企業だから融資を受けられないということはありません。勤務形態に求められるのは基本的に正社員で、契約社員、派遣社員の場合はハードルが高くなります。また、勤続年数は3年以上とするところが多いようですが、同じ業種でワンランク上を狙った転職などは考慮される余地があります。
返済力を判断する尺度としては、一般的に「返済負担率」が用いられます。返済負担率とは年収に対する返済額の割合で、「年間返済額÷年収」で計算します。ただし、住宅ローン以外にも自動車ローンなどの借り入れがあれば、その返済額も「年間返済額」に合計します。返済負担率の基準は年収によって異なり、「フラット35」では年収400万円未満は30%以下、年収400万円以上は35%以下となっています。民間の金融機関でもほぼ同じ基準となっているようです。
「人的審査」としては健康状態もチェックポイントとなります。民間金融機関のローンの場合、団体信用生命保険に加入することが義務付けられているので、この保険に入れない健康状態では融資を受けることはできません。
「返済負担率」はあらかじめ自分で計算し、その範囲内で申し込めばいいわけですよね。
基本的にはそうですが、注意点がひとつあります。計算に用いる金利です。同じ額を借りても金利によって返済額は大きく変わり、返済負担率も変わってくることになります。
金融機関が返済負担率を計算するときに用いる金利ですが、必ずしも自分が契約するローンの適用金利とは限りません。たとえば、変動金利で借りる場合、将来的に金利が上昇し、返済負担率も上昇するリスクがあります。このリスクをカバーするために、金融機関によっては「審査金利」と呼ばれる金利を使うところがあります。審査金利は適用金利よりも高いケースが多く、返済負担率が適用金利を使って計算したものより高くなってしまうことがあるのです。
なるほど。
では「物的審査」の内容について教えてください。
「物的審査」ですが、金融機関は対象物件を担保として融資を行います。このため、対象物件が十分な担保価値を持っているかどうか、金融機関は調べる必要があります。
具体的には、抵当権が設定されていないかどうか、建築基準法に適合しているかどうか、都市計画法で再建築が可能な地域かどうか、などが重要なチェックポイントとなります。再建築が基本的に認められていない市街化調整区域では審査が通らないと考えた方がいいです。
なお、「フラット35」では、住宅金融支援機構が定める技術基準に適合している必要があります。また、住宅の床面積について、一戸建てでは70平方メートル以上、マンションでは30平方メートル以上という基準を設けています。
どんなに収入が多くても、
「物的審査」で通らない場合もあるわけですね。
そうです。物的条件についてはローンを申し込む前にきちんと確認しておきましょう。それも含め、できるだけ審査を通りやすくするための事前準備が大切となります。
また、審査が通らなかったとしてもマイホームをあきらめる必要はありません。ご質問にあったように、別の金融機関で通ることもあります。また、借入額を減らして再審査を受ける、妻の収入を合算して申し込むなどの方法もあります。