「収入合算」と「ペアローン」、どっちがおトク?
相談者: 夫婦一体で住宅ローンを検討している20代会社員 黒木秀則さん(仮名、東京・足立区)
夫婦共稼ぎなので「収入合算」か「ペアローン」による借り入れを検討しています。同じように感じますが、どちらがトクですか?
回答者:ファイナンシャルプランナー 家塚みつを
「収入合算」、「ペアローン」とも、夫婦二人の年収が借り入れのベースとなるので、自分一人の年収だけでローンを契約するよりも多くの資金を借り入れることができます。夫婦が協力してローンを組むという点では似通っていますが、基本的な仕組みは異なるので、それぞれにメリット、デメリットがあります。将来的な夫婦のライフプランも考慮して、検討する必要があります。
「収入合算」は、基本となる夫の年収だけでは希望額を借りられないとき、共働きをしている妻の年収を合算して所得基準をクリアするものです。ローンは夫名義のものがひとつあるだけで、妻の法的立場は債務者ではなく、夫の借金を連帯して保証する連帯保証人となります(「フラット35」の収入合算では合算者は連帯債務者となります)。
一方の「ペアローン」は、夫と妻、それぞれが自分の収入をもとに別個のローンを契約するものです。ローンは2本立てとなり、それぞれが相手のローンの連帯保証人となるほか、妻も自分のローンにおいては債務者となります。
夫の収入だけによるローン、および収入合算、ペアローンによる住宅ローン契約の主要な相違点をまとめたのが下表です。
夫の単独債務 | 夫と妻の収入合算 | 夫と妻のペアローン | ||
債務者 | 夫 | 債務者 | 債務者 | 債務者 |
妻 | — | 連帯保証人 | 債務者 | |
団体信用生命保険 | 夫 | 対象 | 対象 | 対象 |
妻 | — | — | 対象 | |
住宅ローン減税 | 夫 | 対象 | 対象 | 対象 |
妻 | — | — | 対象 |
※「フラット35」の収入合算では妻は連帯債務者となり、住宅ローン減税の対象となる。
「収入合算」と「ペアローン」では、団体信用生命保険(団信)と住宅ローン減税の扱いが違ってくるわけですね。
そうです。「収入合算」の場合、合算者(妻)は通常、連帯保証人の立場なので、団信には入りませんし、住宅ローン減税の対象にもなりません。団信に入らないので、万一、合算者の妻が亡くなった場合も、夫はそのまま債務の返済にあたる必要があります。逆に、万一、夫が亡くなった場合は保険がすべてを返済するので、合算者の妻には何の債務も残りません。
一方の「ペアローン」では、妻も自分の名義でローンを契約することになるので、当然、団信にも入ることになります。また、債務者の立場なので、住宅ローン減税も受けられます。妻も団信に入るので、万一、妻が亡くなった場合、夫は妻の債務を引き継ぐ必要はありません。逆に、夫が亡くなった場合、夫の債務はなくなりますが、妻は自分のローンについては引き続き返済にあたる必要があります。
その他のメリット、
デメリットって何かありますか?
「収入合算」で妻の収入を合算する場合、金融機関によって扱いが異なりますが、合算できる金額を妻の年収の半分までとしているところが多いようです。このため、「ペアローン」にした方が借入可能金額は多くなるという面がある一方、金融機関の審査は「ペアローン」の方が厳しいところが多いようです。
また、「ペアローン」ではローンが2本立てになるので、ローン契約にかかわる諸費用が多くかかることになります。
わかりました。最後に、「収入合算」もしくは「ペアローン」にするにあたっての注意点を教えてください。
「収入合算」「ペアローン」ともに、確かに自分一人の収入をベースにするよりも多くの資金を借りることができます。ただ、裏返せば返済負担も多くなるということです。
この2つの方法は、いずれも夫婦共稼ぎというのが前提になっています。問題はローンを完済するまで夫婦共稼ぎを続けられるのかということです。いろいろな理由で共稼ぎができなくなったとき、どう対応するのか考えておく必要があります。