財形貯蓄を条件にした「財形住宅融資」って、トクですか?
相談者:住宅取得で財形貯蓄を検討し始めた20代会社員 野村翔太さん(仮名、三鷹市)
勤務している会社に財形貯蓄制度があるので、住宅資金準備として積み立てを考えています。メリットや注意点を教えてください。
回答者:ファイナンシャルプランナー 家塚みつを
勤務先で財形貯蓄制度を導入しているなら、迷わず加入することをお勧めします。勧める理由は得だからです。将来に財形住宅融資を受ける場合はもちろん、住宅融資を受けなかった場合についても有利な制度です。なぜ有利かと言えば、制度創設(1971年)の趣旨が「勤労者の財産形成に資するため」で、国もいろいろな面で優遇しているからです。
まず、貯蓄としてみた場合、税制面で優遇措置がとられています。財形貯蓄には一般財形貯蓄、財形年金貯蓄、財形住宅貯蓄の3種類がありますが、このうち財形年金貯蓄、財形住宅貯蓄については元金550万円までは利息が非課税となっています。このため、住宅取得を検討されている場合は、住宅取得資金の払い出しが可能な「財形住宅貯蓄」を選んでください。
つぎに、財形貯蓄を条件にした財形住宅融資を受ける場合、適用金利や融資額など融資条件で民間の住宅ローンより有利な点が多くなっています。
まず、財形住宅融資を受けることのできる条件ですが、財形貯蓄(3種類のどれでも可)を1年以上続け、残高が50万円以上あれば利用可能です。5年以上続けていれば、融資を受けた上で解約して残高を自己資金に充当することもできます。5年以内でも、財形住宅貯蓄なら住宅取得時に残高の一部の払い出しができます。
融資の形としては、勤務先を通じて行う財形転貸融資と、住宅金融機構に申し込む財形機構融資があります。財形転貸融資は勤務先によって融資条件が異なるので、ここでは一般的な住宅金融機構を通じて受ける場合の融資条件についてお話します。
基本的な融資条件ですが、融資額の上限は貯蓄残高の10倍、最高4000万円、所要額の90%まで。ただ、返済負担率(年収に対する返済負担額の割合)の上限が設けられており、年収400万円以下では30%、年収400万円以上では35%となっています。返済期間は10~35年。対象となる住宅の要件は、マンションで専有面積が40~280平方メートル、戸建てで住居面積が70~280平方メートルです。
最も重要な金利もお得な設定となっています。「5年固定金利制」という、変形変動金利とでも呼ぶべき独特の金利制度を採用していますが、民間金融機関の変動金利に比べて有利に設定されています。「5年固定金利制」は、5年ごとに金融市場の動向をみて利率を改定しますが、5年間は完全な固定で、途中で市場金利が変動しても影響は受けません。今年6月現在の適用金利は0.97%(次回改定は13年7月1日の予定)で、民間の変動金利並みの水準です。
住宅金融機構に申し込む財形機構融資で注意が必要なのは、勤務先から住宅手当や利子補給などの援助(負担軽減措置)が受けられることが条件になっているので、事前に勤務先に確認しておくことが必要です。
月に1万、ボーナス時に10万で財形貯蓄を始めて、5年続ければ160万円。10倍の1600万円まで融資が受けられるわけですね。でも、これでは足りないのですが、「フラット35」との併用はできるのでしょうか?
住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して融資する「フラット35」との併用は可能です。財形住宅融資の上限額4000万円に、「フラット35」の融資上限額8000万円が加わるので、合計1億2000万円まで融資が受けられることになります。ただし、融資条件のひとつとなっている返済負担率(年収に対する返済負担額の割合)の計算には、すべての借入金を合算する必要があるので、実際に1億2000万円まで借りられる人は少ないでしょう。
また、財形住宅融資のひとつの特徴として、同じ住宅に同居予定の家族なら複数申し込むことができます。このため、仮に結婚されていて奥様も財形貯蓄に加入していれば、奥様も同じ住宅で財形住宅融資を受けられるので、調達金額は増えることになります。
わかりました。妻とも相談してみましょう。最後に、勤務先を通して融資を受ける財形転貸融資の場合、仮に転職や退職したりしたときに返済で不都合なことはないでしょうか?
転貸融資は勤務先を通じて融資を受ける形なので、本来は退職したときには借入金の残額を一括返済する必要があります。しかし、実際上は難しいケースが多いので、所定の手続きをすれば継続して返済ができるようになっています。 ご安心ください。