家みつ

契約をキャンセルした場合、「手付金」は戻る?戻らない?

契約をキャンセルした場合、「手付金」は戻る?戻らない?

相談者: 気が多くて心の揺れが心配な30代主婦 高橋速香(仮名、東京・中野区)

売買契約をキャンセルした場合、申し込み証拠金とか手付金というのは戻ってくるのでしょうか?

回答者:ファイナンシャルプランナー 家塚みつを

簡単に言うとケースバイケースです。

まず、物件の契約・購入までの流れを見ていきます。下見などをして気に入れば、とりあえず物件を押さえておいてもらうために5~10万円程度の「申し込み証拠金」を支払います。その後、正式に買うことを決めると、「手付金」を払って売買契約を結びます。手付金は物件価格の5~10%程度です。売買契約を結ぶと、売り主には登記の移転と物件の引き渡し、買い主にはローンの契約と残代金の支払い(物件引き渡し時)という義務が生じます。

売買契約を結ぶ前にキャンセルした場合、自己都合であっても申し込み証拠金は戻ってきます。問題は、売買契約時に払う手付金です。民法では手付金は「解約手付」となっており、売買契約書でも原則として「解約手付」となります。

「解約手付」というのは、相手方が売買契約で発生する義務を実行しない前なら、買い主は手付金を放棄すれば解約でき、売り主は手付金の倍額を支払えば解約できるというものです。つまり、売り主が登記の移転と物件の引き渡しを行う前なら、買い主は手付金を放棄する代わりに自己都合で契約をキャンセルでき、売り主から損害賠償を請求されることもないということです。

なるほど。こちらからキャンセルしようとすれば、手付金は戻ってこないということですね。

そうとも言い切れません。買い主側の事情でキャンセルしても、理由によっては手付金が戻ってくることもあります。

ひとつは、金融機関に申し込んでいたローンの認可が下りなかった場合です。ただ、この場合も契約書に「ローン条項」を入れておく必要があります。「ローン条項」とは、万一、予定していたローンを組めなかった場合は解約できるという特約です。解約しても、手付金は没収されませんし、損害賠償を請求されることもありません。

もうひとつは、買い換えするときに、現在の家の売却代金を購入資金として予定していたのに、売却できなかった場合です。この場合も、契約書に「買い換え条項」を入れておけば、「ローン条項」と同じように何の問題もなく解約できます。

逆に売り主側に問題があってキャンセルする場合、こちらから損害請求とかできますか?

もちろん、できます。いろいろなケースがあると思いますが、たとえば、売買契約を結んだにもかかわらず売り主が移転登記をしない場合、買い主は手付金の返還を要求できるほか、損害賠償を請求できます。

また、家を建てるために土地を購入したものの、その土地が都市計画法などの制限で家を建てられなかった場合、買い主は制限のあることを知ってから1年以内なら、契約を解除して購入代金の返還と損害賠償を求めることができます。

不動産の購入に
クーリング・オフの制度はありますか?

一定期間内であれば無条件で契約を解除することのできるクーリング・オフ制度ですが、不動産業者が売り主となっていて手付金を支払った場合に限ってクーリング・オフできます。ただ、契約した場所が不動産業者の事務所以外という条件があります。それも、買い主が不動産業者を自宅などに呼んで契約した場合は認められません。また、代金の全額を支払っていないという条件もあります。あくまで不動産業者が売り主の場合に限られるので、不動産業者が仲介する場合はクーリング・オフできません。

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