マンションの管理費・修繕積立金、妥当な額を教えて!
相談者:修繕積立金の額が気になる20代会社員 佐々木秀治さん(仮名、東京・板橋区)
マンションでは毎月、管理費と修繕積立金を支払うようですが、安ければいいというものでもない気がします。妥当な金額ってありますか?
回答者:ファイナンシャルプランナー 家塚みつを
マンションの管理費と修繕積立金。ご質問にあるとおり、安ければいいというものではありません。なぜなら、管理費も修繕積立金も、快適なマンション生活を送り、マンションの資産価値を維持していくために必要なお金だからです。
管理費は、安全・安心かつ快適に生活するための共用部の清掃、設備の保守・点検、駐車場など付属施設の管理に、また、修繕積立金は、良好な居住環境を確保し、資産価値の維持を図るため必要な修繕工事費用に充てるものです。修繕積立金は、長期的な修繕計画を策定し、それに基づいて必要となる修繕金を毎月積み立てていきます。積立額をかなり低く設定している新築マンションもありますが、修繕工事の実施時に毎月の積立金だけでは足りず、一時金の徴収や金融機関からの借り入れに頼るマンションの割合が21%にも達している(国交省の平成20年度マンション総合調査)ので、注意が必要です。
購入時に何十万円かの「修繕積立基金」の支払いが必要となるマンションもありますが、これはどういうものですか?
修繕費用を積み立てる方式にはいくつかあります。長期修繕計画に基づく工事費の累計額を計画期間中に均等に積み立てていく「均等積立方式」、当初の積立額を低く抑えて段階的に引き上げていく「段階増額積立方式」、そして購入時にまとまった額を徴収する「修繕積立基金」です。修繕積立基金は均等積立方式もしくは段階増額積立方式との併用となりますが、購入後の積立金負担を軽減する目的で、増加傾向にあります。国交省の平成20年度マンション総合調査によると、修繕積立基金制度を設けているマンションの割合は79%、1戸当たりの平均金額は33万5000円となっています。
また、当初の積立額を抑える目的で段階増額積立方式も増えていますが、将来の負担増を前提とする積立方式の場合、増額しようとする際に区分所有者間の合意形成ができず、修繕積立金が不足する恐れがあります。将来にわたって安定的に修繕費を確保するためには均等積立方式が最も望ましいと言えます。
わかりました。では、安心できる修繕積立金の妥当な額はいくらくらいと考えればいいのでしょうか?
国土交通省が2011年に公表した「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」がひとつの参考になると思います。このガイドラインは、新築から30年後までの長期修繕計画を作成している事例を基に、均等積立方式での修繕積立金の平均額(専有床面積1平方メートル当たりの月額)と、事例の3分の2が含まれる価格帯を目安として示しています(下表)。
15階から19階の数値が入ってないのは事例の数が少なかったためですが、15階未満と20階以上の間に収まるとしています。また、20回以上の高層マンションは、外壁などの修繕に特殊な足場が必要となるほか、共用部分の占める割合が高いために、修繕工事費が増大する傾向があります。
この数値で計算してみます。たとえば、10階建て、延べ床面積が8000平方メートルのマンションで、専有面積80平方メートルの部屋を買ったとすると、修繕積立金の平均は202円×80で1万6160円、目安の幅は140円×80=1万1200円から265円×80=2万1200円の間となります。
仮に、この目安のゾーンに入っていない場合、必ずしも不適切であるとは言い切れませんが、販売業者に長期修繕計画の中身や積立金の考え方、設定方法を問いただした方がいいでしょう。
最近の新築マンションでは修繕積立基金や段階増額積立方式を採用するところが増えており、上記ガイドラインの平均値を下回るケースが多くなっています。国交省の平成20年度マンション総合調査によると、修繕積立金の平均は1万898円となっています。また、管理費については、管理者が常駐か日勤か巡回かなど管理体制で違ってきますが、同じ調査で平均1万990円(駐車場使用料を除く)となっています。
なるほど。長期修繕計画は購入前にチェックできるのでしょうか?
長期修繕計画は販売業者が購入時に提示するようになっています。30年程度、少なくとも20年以上の長期にわたって定期的に修繕が必要となるものが組み込まれているかどうかチェックする必要があります。たとえば、非常階段の手すりなど鉄部の補修と塗装は4~6年ごと、屋根やバルコニーの防水補修は10~15年ごと、外壁の補修も10~15年ごとに行います。そして、計画表に記載されている修繕費用が、設定されている積立金で賄えるのかどうかもチェックしましょう。