「低炭素住宅」は「省エネ住宅」とどう違う?優遇措置は?
相談者: 「低炭素住宅」に関心を持つ30代主婦 清水真理子さん(仮名、相模原市)
「低炭素住宅」という言葉を目にするようになりましたが、「省エネ住宅」とはどう違うのでしょう?優遇措置は何かありますか?
回答者:ファイナンシャルプランナー 家塚みつを
「低炭素住宅」、あまりいいネーミングとは思えませんが、低炭素=二酸化炭素の排出が少ない住宅を意味します。平成24年12月4日に施行された「低炭素化促進法(都市の低炭素化の促進に関する法律)」により、低炭素化に寄与する住宅は「認定低炭素住宅」として各種の優遇措置を受けられることになったのです。
「低炭素」と「省エネ」は似かよった意味合いがありますが、「低炭素」の方が広い概念で、「省エネ」は「低炭素」を実現する手段のひとつということになります。「省エネ」以外に「低炭素」を実現するものとして、化石燃料から再生可能エネルギーへの転換、「見える化」など建物のエネルギー管理、公共交通機関の利用などがあります。「低炭素住宅」についても、省エネ住宅に求められる省エネ基準の達成はもちろん、それ以外に低炭素化に役立つ対策を講じる必要があります。
省エネ住宅より低炭素住宅の方が基準が厳しいわけですね。「認定低炭素住宅」の具体的な認定基準はどのようなものですか?
法案を策定した国土交通省では、「認定のイメージ」として下図を参考に挙げていますが、具体的な基準としては次の3つを示しています。
1. 省エネ法の省エネ基準に比べエネルギー消費量を10%以上削減
2. 省エネ法に基づく省エネ基準と同等以上の断熱性能の確保
3. 低炭素化に資する下記の措置の中で2つ以上を達成
・HEMS(家庭用エネルギーマネジメントシステム)の導入
・節水対策(節水型機器の採用、雨水の利用)
・木材など低炭素化に資する材料の使用
・ヒートアイランド対策(敷地や屋上、壁面の緑化など)
・据置型蓄電池の設置
・住宅の劣化軽減措置
・高炉セメントの利用
なるほど。実際に建てる場合は工務店やハウスメーカーに相談する必要がありますね。「認定低炭素住宅」に対する優遇措置としてはどういうものがあるのでしょうか?
国は「認定低炭素住宅」に対して、税制面で優遇措置を講じています。最も大きなものは住宅ローン減税の拡充です。住宅ローン減税の控除額は、消費税が予定通り引き上げられることを前提に下記のようになります。年間最大控除額は14年3月までの入居で、一般住宅の20万円に対し認定低炭素住宅は30万円、14年4月以降の入居では一般住宅の40万円に対し認定低炭素住宅は50万円に引き上げられます。
「認定低炭素住宅」の住宅ローン減税による控除額 (カッコ内は一般住宅)
入居年 年末残高の限度額 年間最大控除額 10年間最大控除額
2014年3月まで 3000万円(2000万円) 30万円(20万円) 300万円(200万円)
2014年4月~2017年末 5000万円(4000万円) 50万円(40万円) 500万円(400万円)
認定長期優良住宅と同様、「認定低炭素住宅」についても2014年4月以降の入居について「投資減税型の特別控除」も受けられます。これは、標準的な性能強化費用相当額(4万3800円×床面積、上限650万円)の10%を所得税額から控除されるものです。
登録免許税率も一般住宅の0.3%に対し、0.1%に引き下げられています。
また、蓄電池や蓄熱槽などの低炭素化に資する設備の設置について、通常の建築物の床面積を超える部分は容積率に算入しない措置も取られています。
省エネ住宅などを対象にした「フラット35 S」の適用も受けられそうですね。
その通りです。住宅金融支援機構が民間金融機関と提携して融資する「フラット35」の中で最も金利が優遇される「フラット35 S 金利Aパターン」の対象となります。これは当初10年間、通常のフラット35の金利より0.3%低い金利で融資が受けられるので、メリットは大きなものがあります。
優遇税制、優遇金利、エネルギー節減効果などメリットが多くある一方、建築費は高くなります。費用対効果を検討する必要がありますが、地球温暖化の防止や循環型社会の構築に貢献できる面も考慮したいところです。