「低層住居専用地域」って、本当に住環境が守られるの?
相談者:買い替え先を閑静な住宅地に求める40代会社員 藤岡琢也さん(仮名、川崎市)
買い替えを検討しています。現在は駅前にあるマンションですが、買い替え先は老後の生活も考えて、住環境に恵まれた戸建てがいいと思っています。「低層住居専用地域」なら間違いないと言われましたが、本当に住環境が守られる地域なのでしょうか?
回答者:ファイナンシャルプランナー 家塚みつを
「用途地域」の問題ですね。「用途地域」は、都市計画法で指定された市街化区域を、良好な生活環境を保つためにさらに12の地域に分け、区域ごとに建設できる建物の種類を制限した地域のことです。
用途地域の一覧は下表のとおりですが、12あるうち住居系が7、商業系が2、工業系が3となっています。このうち住宅を建てられないのは工業専用地域だけです。一方、最も建築制限が厳しく、良好な住環境が守られるのは、7つある住居系用途地域の中でも「低層住居専用地域」に区分される「第一種低層住居専用地域」「第二種低層住居専用地域」です。
用途地域 | 住居系 | 低層住居専用地域 | 第一種低層住居専用地域 |
第二種低層住居専用地域 | |||
中高層住居専用地域 | 第一種中高層住居専用地域 | ||
第二種中高層住居専用地域 | |||
住居地域 | 第一種住居地域 | ||
第二種住居地域 | |||
準住居地域 | |||
商業系 | 近隣商業地域 | ||
商業地域 | |||
工業系 | 準工業地域 | ||
工業地域 | |||
工業専用地域 |
特に「第一種低層住居専用地域」は制限が厳しく、建物の高さが10メートルまたは12メートル以下に制限されているほか、住宅以外で建築できるのは小規模な店舗や事務所を兼ねた住宅、銭湯、診療所、小・中・高校、図書館などに限られているので、低層住宅には最良の地域と言えます。
「第二種低層住居専用地域」も、第一種ほどではありませんが、低層住宅の良好な環境を守るために指定された地域です。高さ制限は第一種と同じで、違うのは、2階建てまでの延べ床面積150平方メートル以下の店舗・飲食店も建設が認められることです。
ということは、「第一種低層住居専用地域」なら戸建ての住環境が間違いなく守られると考えてもいいのでしょうか?
100%大丈夫とは言い切れません。
たとえば、高さ制限が設けられていますが、逆に言えば10メートルもしくは12メートルまでなら建てられるということです。では、3階建てのマンションは建てられないのでしょうか。
通常、マンションの階高(各階のコンクリート面からコンクリート面までの高さ)は最低3メートルあれば建築可能で、1階の住戸の床の高さや屋上のパラペット(手すり壁)の高さを考慮しても、高さ10メートルなら3階建てのマンションは建てられます。仮に、購入した戸建ての南側に3階建てのマンションが建設されたとすると、日あたりは間違いなく悪くなりますし、家の中が覗かれるという心配も出てきます。
また、道路をはさんだ向かい側の用途地域が「第一種住居地域」であれば、そこに床面積3000平方メートル以下の店舗、事務所、スポーツ施設、ホテル・旅館が建設されるかもしれませんし、向かい側の用途地域が「第二種住居地域」であれば、麻雀・パチンコ店、カラオケボックス、床面積3000平方メートル超のスポーツ施設、ホテル・旅館、事務所が建てられる可能性があります、
なるほど。「第一種低層住居専用地域」でも、場所によっては将来、環境が悪くなるかもしれないということですね。
そうです。ただ、あくまでも場所によっては、ということになります。最初にお話した通り、戸建てなど低層住宅の住環境が最も守られるのは「第一種低層住居専用地域」であり、ついで「第二種低層住居専用地域」であるというのは間違いありません。
閑静な住宅地に住むことを願って、低層住居専用地域で家探し、土地探しをする場合、用途地域の区分が「第一種低層住居専用地域」あるいは「第二種低層住居専用地域」になっていても、周囲の状況をよく確認する必要があります。他の用途地域と隣接ないしは近接していないかどうかをチェック。また、近くに広い駐車場など未活用地があれば、将来的にマンションなどに再開発される可能性があるので要注意です。