不動産広告の“駅から徒歩○分”って、信用できるの?
相談者:駅近マンションを探している20代会社員 前田伸郎さん(川崎市)
通勤に便利な駅に近い中古マンションを探しています。先日、最寄り駅から徒歩5分とチラシに書いてあった物件を見に行ったんですが、実際は地下鉄を降りて現地に着くまで10分近くかかりました。不動産広告の徒歩○分って、信用できるんですか?
回答者:ファイナンシャルプランナー 家塚みつを
不動産広告の内容表示については、業界の公正な競争を確保するために公正取引委員会がつくったルールがあります。「不動産の表示に関する公正競争規約」と呼ばれるもので、ご質問にあるような「交通の利便性」「各種施設までの距離または所要時間」についても表示基準が定められ、実際の施行にあたっての細かな点は「不動産の表示に関する公正競争規約施行規則」で決められています。
ご質問にある「5分と書かれていたのに実際は10分近くかかった」件ですが、適切かどうかは別にして、恐らくこのルールからは外れていないように思います。まず、徒歩時間については1分=80mという算出基準が決められています。これは、直線距離ではなく道路距離ですが、信号や踏切での待ち時間はカウントされませんし、急な坂道であっても考慮されません。ですから、駅の近くで信号が多かったり、坂道があったりすると、広告表示以上に時間がかかってしまうことになります。
また、注意が必要なのは、徒歩時間算出の起点となる駅の場所です。地上駅の場合は駅舎の出入り口、地下鉄の駅の場合は最寄りの地上出入り口が起点となります。このため、複数の路線が乗り入れている大きな駅や、地下深くにある地下鉄の駅の場合などは、電車を降りたホームから起点となる出入り口に行くまでにかなりの時間がかかってしまい、広告に表示された徒歩時間を大きく上回るケースも出てきます。
さらに、複数の棟からなる団地の場合は、駅から最も近い当該団地内の地点を着点として算出することになっており、敷地面積の広い団地では場所によって表示時間を上回ることになります。
なるほど。そういう決まりがあるんですね。確かにホームから地上出口に出るまで時間がかかりましたし、3カ所くらいで信号待ちしたような気がします。たとえば、車やバスを使う場合などにも時間の算出基準があるんですか?
車の場合、算出基準はありません。これは渋滞など走行する道路の状況に大きく影響されるためで、不動産公正取引協議会では具体的な表示の仕方として「自動車で10分(道路距離6㎞)」というように、道路距離を記載した上で通常の走行時間も併記するように指導しています。
また、バスの場合も算出基準はなく、所要時間を表示する場合はバス路線のダイヤによる時間となります。
それと、最寄り駅から都心の駅までの鉄道の所要時間も、自分で「駅探」を使って調べた時間より短く書かれている気がします。
鉄道の所要時間表記にもルールがあります。ご自分で調べられたのは通勤時間帯のダイヤだと思いますが、不動産広告で表示されているのは平常時の所要時間です。多くの路線の場合、平常時=最速であり、通勤時にはもっと時間がかかることになります。ルールでは「通勤時の所要時間が平常時の所要時間を著しく超えるときは、通勤時の時間も表示する」となっていますが、「著しく超える」基準は特に定められていないので、不動産会社の裁量に委ねられることになります。
わかりました。結局のところ、広告やチラシに書かれていることを鵜呑みにしないで、自分の足で確かめてみるのが一番ということですね。
そうです。労を惜しまず、周囲の環境チェックと合わせて実際に歩いて確かめられた方がいいですね。最後にもうひとつ、お子さんがいる場合の注意点です。小学校まで徒歩10分と書かれていても、これは大人の足での話で、低学年のお子さんだったら倍近くかかるかもしれませんよ。