『長期優良住宅』って、なに?メリットは?
相談者:「フラット50」に興味を持った30代公務員 平山基晴さん(仮名、東京・大田区)
借入期間が50年と長いローン「フラット50」の適用対象となっている「長期優良住宅」とはどういうもので、どういうメリットがあるのでしょうか?
回答者:ファイナンシャルプランナー 家塚みつを
「長期優良住宅」は、2009年6月に施行された「長期優良住宅普及促進法」に定められた認定制度で、住宅性能に関する9項目の条件を満たした住宅を長期優良住宅として認定し、税制などで優遇するものです。
この制度をスタートさせた背景には、日本の住宅の使用年数の短さがあります。住宅の平均寿命は米国の44年、英国の75年に対して日本は26年に過ぎません。このため、国も従来の新築重視の考え方から、次世代に継承できる良質の資産としての住宅をつくる方針を打ち出したのです。長く使うことで、環境への負荷の低減を図る狙いもあります。
具体的には、どういう住宅性能を
満たす必要があるのですか?
簡単に言うと「長く快適に住める住宅」ということになりますが、認定される条件となっている9項目を挙げると、劣化対策、耐震性、維持管理・更新の容易性、可変性、バリアフリー性、省エネ性、居住環境、住戸面積、維持保全計画となっています。このうち、たとえば劣化対策の認定基準としては、「住宅の構造躯体が少なくとも100年程度は使用可能」、可変性の認定基準としては「居住者のライフスタイルの変化等に応じて間取りの変更が可能」、また維持保全計画では「建築時から定期的な点検・補修等に関する計画が策定されていること」などとなっています。
実際の認定に当たっては、住宅品確法で定められた登録住宅性能評価期間が申請に基づいて審査、認定し、適合証を交付する仕組みです。
なるほど。
長期優良住宅は普及していますか?
大手のハウスメーカーなどが対応を進めていることもあって、戸建てでは増加してきています。ただ、建築コストが高くなることから、マンションでは普及していません。制度がスタートしてから昨年9月末までの約3年間で認定されたのは約31万8000戸、うち戸建てが31万戸を占めています。
では、長期優良住宅が受けられる
優遇措置を教えてください。
税制面の優遇措置、および住宅金融支援機構と民間金融機関の提携ローン(フラット35、フラット50)における優遇措置があります。
まず、税制面で最も効果が大きいのが、住宅ローン減税での控除額の拡大。下表の通り、長期優良住宅の最大控除額は一般住宅に比べて5割増しとなっています。
控除期間 | 年末残高の限度額 | 控除率 | 年間最大控除額 | 10年間最大控除額 | |
---|---|---|---|---|---|
長期優良住宅 | 10年間 | 3000万円 | 1.00% | 30万円 | 300万円 |
一般住宅 | 10年間 | 2000万円 | 1.00% | 20万円 | 200万円 |
また、購入時の登録免許税、不動産取得税、購入後の固定資産税が軽減されるほか、標準的な性能強化費用相当額(上限500万円)の10%相当額を、その年の所得税額から控除できる所得税の投資型減税もあります。
次に、住宅金融支援機構と民間金融機関の提携ローンにおける優遇措置ですが、優良住宅取得支援制度と呼ばれる「フラット35S」では、金利優遇措置(0.3%の金利引き下げ)の期間が通常の当初5年間から当初10年間に延長されます。また、最初のご質問にあったように、長期優良住宅の場合は借入期間を50年まで長くできる「フラット50」も適用されます。
いいことずくめのようですが、
デメリットはないのでしょうか?
そうですね。デメリットとしては、建築コストが高くなることです。国土交通省が公表している「長期優良住宅に関わる標準的な性能強化費用」によると、認定のための性能強化に床面積1㎡当たり33000~36000円かかるとしています。これで大雑把に試算すると、一般住宅に比べて建築費が2割程度アップすることになります。
一方で、先ほど述べた税制面などでの優遇措置を受けられるわけですが、すべてのメリットを合計しても建築費の2割増加分をまかなうことはできず、30~40年程度の期間で考えると経済的メリットはありません。ただ、建て替えることなく子や孫の世代に継承し、100年も住み継いだとしたら、建て替え費用がいらない分、大きな経済効果を生み出します。長期優良住宅については、長期にわたるトータルコストで考える必要があると言えます。