地価が下がっているのに、固定資産税が上がるのはなぜ?
相談者:ランニングコストも気になり始めた30代会社員 長谷川隆司さん(仮名、川崎市)
実家に帰ったとき両親が「地価が下がっているのに固定資産税は毎年上がっている」と不満を漏らしていました。私も家の購入計画があるので、ちょっと心配です。これって、どうしてなんですか?
回答者:ファイナンシャルプランナー 家塚みつを
固定資産税は不動産の評価額に一定の税率を掛けて算出するものなので、土地の価格が下がれば固定資産税も下がるのが当たり前です。ところが、実際はご質問のように、地価が下落しているのに固定資産税は逆に高くなってきたケースが多くあります。
下のグラフは土地の資産額と固定資産税の税収額の推移を見たものです。土地の価格が1990年をピークに下落に転じたにもかかわらす、固定資産税収額は上昇を続け、2000年から横ばいとなっているのがわかります。
この不可解な現象は、土地の課税をめぐる過去の変遷が原因となっています。過去の歴史をひも解く前に、固定資産税の現在の算出方法を見ておきましょう。
住宅用地の固定資産税 =
土地の評価額×住宅用地特例(1/6または1/3)×負担調整措置×税率(1.4%)
「土地の評価額」は3年ごとに見直されます。「住宅用地特例」は宅地に対する優遇策で、200㎡未満の小規模宅地については6分の1、200㎡以上の一般宅地については3分の1に軽減される仕組みです。問題となるのは「土地の評価額」と「負担調整措置」です。
土地の評価額の基準は、1993年以前は市町村ごとにばらばらとなっていました。また、当時の地価高騰の原因の一つが固定資産税の安さにあるとの批判も出ていたことから、1993年の税制改正で土地の評価額を公示価格の7割に統一し、全体として税額を引き上げることが決まったのです。ただ、当時の評価額は公示地価の3~4割が一般的だったので、これを7割に引き上げると固定資産税の負担が一気に増すことになります。
この急激な税額上昇を抑えるために設けられたのが「負担調整措置」です。これは本来の課税評価額(公示価格の7割)に達していない土地について、毎年、評価額を5%(評価額が本来の課税評価額の2割以下の土地については20%)ずつ緩やかに引き上げていく措置です。
ところが、評価額が高めの土地と低めの土地とで不公平感があるとの批判が出たことから、1997年には「据え置き特例」が設けられました。これは、評価額が本来の課税評価額の80%以上と高い土地については、前年度の評価額を据え置くというものです。80%未満の低い土地については負担調整措置が継続されました。
ただ、この据え置き特例も今年の税制改正で廃止されました。これは、本来の課税評価額に対して80%未満の土地が少なくなり、課税に対する不公平感が小さくなってきたからです。
なるほど、いろいろな経緯をたどってきたわけですね。そうすると、今後はどうなると考えればいいのでしょうか。
評価額が本来の課税評価額(公示価格の70%)に達していない土地については、今後も本来の課税評価額の100%に達するまで引き上げられます。据え置き特例で97年以降、評価額が据え置かれていた土地についても2012年度(13年1月1日現在の所有者)から毎年5%ずつ上がることになるので、注意が必要です。ただ、本来の課税評価額の90~100%の土地については2012年度、13年度は据え置き特例が継続され、14年度から5%ずつ上がることになっています。
たとえば、課税評価額が2400万円の土地なら固定資産税は本来5万6000円ですが、実際の評価額がその80%にとどまっている場合、固定資産税は4万4800円で済んでいました。しかし、据え置き特例の廃止により、12年度から5年間、段階的に引き上げられることになります。